VOICE2025-06-23

サステナブル最前線。LCAを覗く 一般財団法人カケンテストセンター

2050年脱炭素目標と関連性が高く、環境負荷に対する新たな考え方として注目されている”LCA”。 そのLCAを深堀すべく、LCA最前線について、一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室のお二人にお話を伺ってきました。

一般財団法人カケンテストセンター

「より良い暮らしのために」をパーパスに繊維関連や皮革類、紙、ゴムやプラスチックなどの幅広い分野での品質試験・検査を主な業務としています。

”SDGs” ”気候変動” ”脱炭素” そして耳にすることが多くなった”サステナブル”という言葉。
”サステナブル(Sustainable)”とは、英語の「sustain(持続する)」と「able(できる)」を組み合わせた言葉で、「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味。
環境・社会・経済などの分野において、長期的に持続可能な社会を実現するための取り組みを指し、日本語では「持続可能性」とも呼ばれて少しずつ取り組みがおこなわれています。
では、なぜ”サステナブル”という考えが必要なのか。。
温室効果ガスによる気候変動によって地球温暖化による異常気象や災害の激甚化。
人類は重要な局面に立たされているなか、世界は脱炭素に向けて動き出しています。

2050年カーボンニュートラル

日本では2020年、当時の菅総理の所信表明演説において「わが国は、2050年までに、温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言がされました。

2050年に脱炭素を達成するためには、すべての企業や組織が、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする必要があります。

さらには、この目標を達成するために、

■2030年には2013年度比46%減、さらに50%減の高みを目指して挑戦していかなければなりません。
Q.そもそも自分の会社は、今どのくらい温室効果ガスを排出しているのか。
Q.具体的にいつまでに何トン削減すればいいのか。
Q.まず、どこから削減に取り組めばいいのか。

そんな悩みを解決してくれるのが”LCA”です。

2050年脱炭素目標と関連性が高く、環境負荷に対する新たな考え方として注目されている”LCA”

”LCA”とはライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)

ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法のことです。

そのLCAを深堀すべく、LCA最前線について、
一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室の藤田一馬さん、伊藤未緒さんのお二人にお話を伺ってきました。

 生地や製品の鑑別や試験から、サステナビリティ関連業務・・・へ。

FiTOスタッフ>はじめに、一般財団法人カケンテストセンターについて教えていただけますか?

藤田さん:
弊センターは繊維関連や皮革類、紙、ゴムやプラスチックなどの幅広い分野での品質試験・検査を主な業務としています。
また、機能性関連試験や衛生関係の試験なども対応しており抗菌、抗ウイルスなどの機能性検査やマスクの検査など身の回り品の検査なども行っています。

一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室の藤田一馬さん

それ以外にも、防護服の安全性試験やPFASなどの化学物質の分析試験などにも対応しています。
私は現在サステナビリティ戦略推進室に所属していて、お客様の環境情報開示の支援業務を担当しています。

一般財団法人カケンテストセンター
出典元:https://www.kaken.or.jp/
一般財団法人カケンテストセンター,試験を探す
出典元:https://www.kaken.or.jp/test

FiTOスタッフ>サステナビリティ戦略推進室に着任されるまでどのようなお仕事をされていましたか。

藤田さん:
今の部署に配属される前は試験や検査業務に携わっており、中国の試験室にも計8年駐在しておりました。
現在の部署には2023年4月から新たに配属となり、今の業務はこれまでの業務内容とは全く異なる内容のため、配属当初はとまどいもありましたが、日々勉強を重ねながら、業務に取り組んでいます。

一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室の藤田一馬さん

伊藤さん:
私は繊維の鑑別や混用率の試験を担当し、サステナビリティ戦略推進室に配属されました。

藤田と同じく、2023年4月に新たに立ち上げたこの部署で、主にLCA関連業務を担当していて日々学びながら業務に取り組んでいます。

一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室の伊藤未緒さん

FiTOスタッフ>サステナビリティ戦略推進室に着任されてからはどのような活動をされていますか?

伊藤さん:
カケンではサステナビリティに関するサービスはCSR監査、化学物質の分析業務などいくつかありますが、私たちの部署では、お客様に向けたLCAの算定支援関連の業務を行っています。
具体的にはお客様からご依頼を受けて、LCAの算定を実施したり、LCAに関するコンサルティングなどもご提供しています。

一般財団法人カケンテストセンターのサステナビリティサービス
出典:https://www.kaken.or.jp/lp/4/

LCAで複雑なサプライチェーンを紐解く。

FiTOスタッフ>LCAって聞きなれない人もいると思うのですが、基本的なことから教えてもらえますか?

伊藤さん:
LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品やサービスの一生におけるインプット(投入資源)とアウトプット(排出物)を定量的に評価する手法です。

ISO14040に基づいており、「目的と調査範囲の設定」「インベントリ分析」「インパクト評価」「解釈」の4つの段階に分かれます。

例えば、Tシャツを作る際には、綿花の栽培から製造、輸送、使用、廃棄までの過程について評価を行い、これらの各プロセスにおける環境影響を評価することで、どの部分での環境負荷が高いのかを明確にし、改善策を検討することができます。

一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室の伊藤未緒さん
LCAの算定代行、算定支援サービス
出典:https://www.kaken.or.jp/lp/4/

FiTOスタッフ>製品が作られて捨てられるまでのプロセス全部ですか?果てしないですね。。。もうすこし詳しくLCAのプロセスについて教えてもらえますか?


藤田さん:
先ほど伊藤からもLCAは、「目的と調査範囲の設定」「インベントリ分析」「インパクト評価」「解釈」の4つの段階に分けて算定するとお伝えしましたが、特にインベントリ分析では、製品やサービスのインプットとアウトプットのデータの収集を行う必要があり、ここがLCAの算定においては一番時間がかかる部分ですし、収集するデータの正確性や収集の難しさが課題になる工程でもあります。
エネルギー使用量や排出物のデータを正確に収集することは簡単ではないので。

伊藤さん:
サプライチェーンの複雑さも課題となります。
サプライチェーンが長ければ、収集するデータも多くなり、また各工場様からデータを収集する際には工場様とのコミュニケーションも非常に重要となります。
データの収集には多くの時間と労力がかかるため、どこまでを詳細に調査し、どこを簡略化するかの判断も重要ですね。

一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室の伊藤未緒さん

FiTOスタッフ>具体的な事例や実績があれば教えていただけますか?

伊藤さん:
例えばリサイクル糸の使用による削減効果の確認や、自社内の定番商品のLCAを算定し、どの製造工程での環境負荷が高いかを把握するためにLCA算定を実施したケースなどがあります。
また、お客様のご要望に応じて、特定の商品についてLCAを実施し、その結果を応用して、自社製品のGHG排出量全体を知ろうとするような動きも増えてきています。
繊維業界では、多くの製品があり、それぞれの製品での取り組みが進んでいますね。

 
藤田さん:
最初は我々のような外部の機関の支援を受けながらLCAを実施し、そのあとは自社内でLCAの算定ができる社内整備の構築支援をご依頼されるケースも増えてきています。
企業側がLCAの重要性を認識し、環境負荷削減に積極的に取り組む姿勢が強まっている証拠だと思います。

一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室の藤田一馬さん

世界を見通し、企業に寄り添う

FiTOスタッフ>なるほど。では、今後のLCAの展望や御社の目標について教えてください。

藤田さん
海外、特に欧州では環境規制が強化されており、欧州で販売する衣料品は環境情報の開示が義務化される方向で法整備が進んでいるため、LCAの活用が進んでいくものと考えられます。また、グリーンウォッシュへの規制を強化するための法整備も進められており、環境主張をする際はLCAデータなどの根拠データの開示が求められるようになると考えられます。
日本国内では公共調達において、環境への負荷ができるだけ少ないものを調達する指針を出しており、一部の品目ではありますがカーボンフットプリントの開示が求められるようになってきています。

また、金融機関や投資家が企業価値を判断するための一つの要素として企業の環境負荷削減に向けた取り組みを重視しているため、削減に向けてはLCAの活用がより進んでいくものと思います。
環境負荷削減に向けては、どのように対応していくべきか悩まれているケースも多いと思います。カケンではニーズをお聞きしながらお客様に寄り添ったサポートをご提供していきたいと思います。

伊藤さん:
ファイナンスの分野でも環境情報の開示が求められるようになってきています。
有価証券報告書に対する情報開示が求められるようになり、温室効果ガスの排出量の開示が重要となってきています。
これにより、企業は環境負荷の削減に向けた具体的な取り組みを行う必要がありますね。

一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室の伊藤未緒さん

LCAを活かして、わたしたちの手で未来を守る

FiTOスタッフ>最後に、LCAに関心を持つ企業や団体に対してのメッセージをお願いします。

伊藤さん:
環境負荷を削減することは、私たち地球上のすべての人々が担うべき責任だと思います。
次世代に持続可能な未来を引き継ぐために、一人一人が考え、行動することが大切です。

企業としても、消費者としても、地球環境を守るために何ができるかを常に考えていくことが重要だと思います。
LCAはそのためのツールとして非常に有効であり、具体的なデータに基づいて環境負荷削減に向けた取り組みを効果的に進めることができます。

お客様と一緒に環境課題解決に取り組むことが今の業務のやりがいです。

一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室の伊藤未緒さん

藤田さん:
地球の気温は上昇し続けており、2024年の夏も異常な暑さでした。
最近は夏場の日中に公園を通っても、子供たちが遊んでいない閑散とした光景を目にすることが多く、「この状況が続いて大丈夫なのかな」と不安になります。

昨今では環境課題への取り組みは企業のビジネスへの取り組みにも大きな影響を及ぼしますが、環境課題への取り組みは、持続可能な未来を目指すというシンプルな考えが根底なのではないかと私は思います。

一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室の藤田一馬さん

LCAの社会実装を通して、持続可能な未来を創造するため、環境課題の解決に向けて貢献していきたいと考えています。
今を生きる一人一人が環境課題の解決に取り組むことで、今と同じ地球環境と資源を後世に残していくことが現代を生きる私たちの責任だと思っています。

一般財団法人カケンテストセンター サステナビリティ戦略推進室の藤田一馬さん、伊藤未緒さん

お忙しい中、インタビューにご協力くださりありがとうございました。

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